生物機能情報分野 平成30年度は学生募集をしません

准教授: 伊藤 啓
分子細胞生物学研究所(本郷)
E-mail: itokei{at}iam.u-tokyo.ac.jp
研究室HP

研究紹介

 情報処理装置としての脳がどうやって動作するのか、その回路がどうやって作られるのかは、わかっていないことが未だ大半である。そこで本研究室では、複雑膨大すぎる全貌を把握することが難しい高等脊椎動物の脳ではなく、シンプルな構造のわりに高度な情報処理を行い、豊富なゲノム情報と多様な遺伝子工学テクニックを駆使した研究が可能なモデル動物キイロショウジョウバエを用いて、脳神経回路の構造・機能・発生過程を体系的に解析している。

1. 脳の構造の解析

 全遺伝子型の7分の1以上をカバーする、4500系統を越えるGAL4エンハンサートラップ系統コレクションを用いて、幼虫と成虫の脳における発現パターンを画像データベース化した。このデータから様々な神経回路を特徴的にラベル化する系統をスクリーニングし、構造を詳細に解析することによって、感覚神経から脳の高次中枢へと順番に、視覚、嗅覚、聴覚など感覚の種類ごとに情報の流れを追って回路の同定を進めている(図参照)。また学習などの高次機能を担うとされる領域についても、周辺脳領域との入力と出力の情報の流れを詳しく解析している。

図:GAL4エンハンサートラップ法でラベルされた、複眼からの視覚情報を脳本体へ伝える様々な経路の三次元再構成像

2. 脳の機能の解析

 ゲノムプロジェクトの遺伝子データベースを利用したin situハイブリダイゼーションや各種抗体を組み合わせて、(1)で同定された神経がどの伝達物質を放出し、どの伝達物質を受容するかのマップ作業を進めている。また神経の機能を転換したり阻害したりする各種遺伝子を特異的に強制発現させ、交尾行動や光源定位行動などへの影響を調べることで、神経回路と脳の機能分担の相関を解析している。

3. 脳の発生の解析

 同定された神経回路が形成される過程を、正常状態および各種遺伝子の強制発現や突然変異状態下において経時的に解析をすることで、神経繊維が正しく伸長し、回路を形成し、微小環境に応じて動的に再構成を行う過程を研究している。新しい細胞ラベル法を実用化することにより、1つの神経幹細胞の子孫細胞が作る全神経回路を成体脳で可視化し、細胞系譜に依存した神経回路モジュールが脳内に多数存在することを発見した。複雑な脳回路をこのようなモジュール構造の組み合わせとして整理して把握し、神経細胞とグリア細胞の相互作用に着目しながら、神経回路形成メカニズムの解析を進めている。

4. 脳のバイオインフォマティクス

 極度に単純化された仮想的な「ニューラルネット」でなく現実の神経回路に基づいた脳機能のコンピュータシミュレーションは、未だ実現にはほど遠い。比較的単純な構造を持つショウジョウバエ程度の脳が完璧にシミュレートできないようでは、SFに出てくるような人間の脳の機能を再現したコンピュータは、いつまでも絵空事の世界にとどまり続ける。そこでハエの脳の回路をコンピュータ上に再現することを長期目標として、当面は複雑な三次元的回路構造からのトポロジカル情報の抽出と、データベース化の方法を検討している。

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