生物情報科学分野 2020年度の学生募集をします

教授: 角田 達彦
E-mail: tsunoda{at}bs.s.u-tokyo.ac.jp

研究紹介

【キーワード】ゲノム医科学、トランスオミクス、プレシジョン医療、がん免疫

 本研究室では、生体分子の膨大なデータを解析して、がんなどの病気の克服を目指し、それらの病気に対する免疫などの生体現象を理解する研究を行います。近未来の医療として、患者さん一人ひとりに合わせた種類と量の治療や、病気の予防が期待されます。そのため、医療機関などで蓄積されるゲノム・オミックスデータ、画像データ、臨床情報など、生命・医科学のビッグデータからデータマイニングを行い、がんや生活習慣病などの病気の原因を発見します。そして、臓器・組織の多階層生化学ネットワークの再構築をすることで、疾患メカニズムを全体のシステムとして理解します。例えば、がんと、免疫などのがんの微小環境との関係をひもとくことで、個人ごとに治療の奏効や副作用、耐性獲得を予測します。このように、最先端の観測技術と数理科学と計算科学を駆使した、生命医科学研究を行います。


図1 肝がんのゲノム変異による分類と予後(左)、がん免疫研究による治療予測(右)

がん免疫研究

私たちは最近、肝がんの患者300人からのがん細胞の全ゲノム配列を解析し、新たな変異をもつクラスタを発見しました [1]。このクラスタの患者さんは、手術後にがんの再発が起こりにくく、良好な経過をたどります。その後、それぞれのクラスタを詳細に解析すると、がん細胞の集団的特性や、免疫などの微小環境との関係が、それぞれ異なることがわかってきました。がん細胞は実は私たち自身の細胞が変化したもので、非自己ですので免疫が排除するわけですが、がん細胞もまた巧みに変化して、さらに逃げます。つまり、がんの個性と、微小環境の相性や治療の内容で、その後の挙動に違いが生まれます。このような違いをうむメカニズムを理解するとともに、治療効果予測モデルを作り、患者に合わせた治療を行うプレシジョン医療を目指します。



トランスオミクス研究

上記のがん細胞と免疫などの微小環境の相互作用を理解するには、がんのゲノムのみならず、エピゲノムや、環境も含めた形の遺伝子発現などを合わせた、オミクス解析が大変有効であることがわかってきました。そして、がんだけでなく、その他の生活習慣病にもこの方法が使えます。例えば、最近私たちは、ぜん息の全世界の国際共同プロジェクトに参画し、ヒトゲノム全染色体上での、ぜん息に関わる遺伝子を多く発見しました [2]。その遺伝子たちの機能を推定するため、エピゲノムや遺伝子発現(eQTL)を考慮すると、ほとんどが免疫に関わる遺伝子であることがわかりました。もう一つの研究では、アルツハイマー病の原因を探るため、認知症患者のゲノムデータとアルツハイマーのモデルマウスの遺伝子発現データを統合して解析すると、新たに2つの遺伝子が候補として見つかりました [3]。このように、トランスオミクス研究により、生体や病気の描像がより理解しやすくなります。今後は、ネットワーク・システム解析によって、より詳細なメカニズムを理解していきます。


図2 ぜん息の国際共同研究による発見(左)、アルツハイマートランスオミクス研究(右)

機械学習・深層学習による解析方法論

人工知能の根幹となる方法に機械学習や深層学習がありますが、それらが、画像のみならず、ゲノムやオミクスのデータを解析する能力を極める研究をします。応用例は、病理画像や生体イメージングなどの画像データの解析、オミクスデータの解析、それらの統合の解析です。一例として、オミクスなどの非画像データを、画像データに変換して深層学習へ持ち込み、深層学習の能力を最大限引き出す研究を行ってきました。

いろいろな人が集まって研究しています

私たちの研究室は、東大以外にも、東京医科歯科大学、理研にもあり、また多くの連携研究をしています。そのため、生命情報研究者以外にも、臨床医や、遺伝学、シークエンス解析、ネットワーク解析、数学が好きな研究者など、また、外国人研究者も多く、お互いにさまざまな考え方を出しあって日々研究しています。

参考文献

[1] Fujimoto A, Tsunoda T, et al. Whole genome mutational landscape and characterization of non-coding and structural mutations in liver cancer. Nature Genetics, 48, 500-509 (2016).
[2] Demenais F, Tsunoda T, et al. Multiancestry association study identifies new asthma risk loci that colocalize with immune-cell enhancer marks. Nature Genetics, 50, 42-53 (2018).
[3] Yamaguchi-Kabata Y, (,,,) Tsunoda T. Integrated analysis of human genetic association study and mouse transcriptome suggests LBH and SHF genes as novel susceptible genes for amyloid-β accumulation in Alzheimer's disease. Human Genetics, 137, 521-533 (2018).

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