病態医療科学分野/ウイルス発癌分野 平成30年度の学生募集をします

教授: 内丸 薫
TEL:03-5449-5298
E-mail: uchimaru{at}cbms.k.u-tokyo.ac.jp
研究室HP


准教授: 佐藤 均
TEL:03-5449-5299
E-mail: hitsatoh{at}k.u-tokyo.ac.jp



准教授: 中野 和民
(ウイルス発癌分野)
TEL:03-5449-5295
E-mail: nakanokz{at}k.u-tokyo.ac.jp
nakanokz@ims.u-tokyo.ac.jp

研究紹介

■ 内丸教授グループ

【キーワード】HTLV-1、ATL、エピゲノム、EZH2、HTLV-1 Tax, HTLV-1 Rex

内丸教授グループでは、血液腫瘍学を専門とする病態医療科学分野の内丸教授のチームと、ウイルス腫瘍学を専門とするウイルス発がん分野の中野准教授が連携して研究を進めることにより、HTLV-1感染が引き金となって起こる成人T細胞白血病(ATL)の発症機序の解明と新しい治療法や発症予防法の開発を目指した研究を行っている。
ATLは、ヒトレトロウイルスHTLV-1が主に母乳を介して伝播され、乳児のT細胞に感染することにより、60歳前後の高齢になってから発症する。ATLには未だ決定的な治療法が無く、最も予後不良な血液腫瘍疾患である。乳児期のHTLV-1感染から高齢になってからのATL発症までには長い年月がかかるが、本研究室ではHTLV-1が感染したときに宿主T細胞に起こった異常が数十年にわたって受け継がれ、細胞のがん化の引き金になることを明らかにしてきた。(1)ATL腫瘍細胞にはどのような分子異常が蓄積しているのか?(2)HTLV-1感染が宿主T細胞経路にどのような影響を与えるのか?という2つの方向からアプローチし、最終的にはこれらを統合解析することにより、HTLV-1感染がどのようにATL発症の原因となる細胞内分子異常を引き起こすのか、その実態に迫る。さらに(3)HTLV-1と同じヒトレトロウイルスHIV-1によるAIDS及び関連悪性リンパ腫の分子病態についても並行して研究を行っており、HTLV-1とATL、HIV-1とAIDSというウイルスと疾患の関係について明らかにする(図1)。



(1)ATLとはどのような疾患か?

私たちは、ATL細胞にどのような分子異常が蓄積しているかを把握するため、ATL患者血液中の腫瘍細胞や、ATLを発症していないHTLV-1キャリア内の感染T細胞について、遺伝子発現、microRNA発現、Exon発現など様々なマイクロアレイ技術を駆使し、その異常の実態を網羅的に解析している。その結果、HTLV-1感染とATL発症に伴いEZH2、 c-Myb、 FoxM1などの遺伝子発現制御因子やWnt5aのような細胞運動能調節因子など多くの遺伝子が過剰発現すること、miR-31のようながん抑制miRNAの発現が激減することが分かった。さらに転写後mRNAのスプライシング・パターンにも多くの変化が生じていることが分かった。このようにATL細胞では、遺伝子の発現量やその質が変化し、最終的に翻訳されるタンパク質の量や機能に異常が蓄積することが細胞のがん化につながっていると予想される(Yamagishi et al., 2012; Nakano et al., 2016)。  一方、ChIP-on-chipを用いたATL細胞の大規模エピゲノム解析の結果、ATL細胞やHTLV-1感染細胞で見られる遺伝子発現異常には、ポリコームファミリーEZH1/2によるエピゲノム異常が深く関わっていることを見出し、EZH1/2の発現量及びゲノム上の分布変化が、全ゲノムからの遺伝子発現パターンに極めて重大な変化をもたらすことを明らかにした(Fujikawa et al., 2016)。さらに遺伝子発現異常に伴うシグナル伝達経路や遺伝子翻訳の活性化異常にも注目し、ATL細胞のエピゲノム異常を起点とした細胞内経路異常の全体像の解析を試みている(Fujikawa et al., 2016; Kobayashi et al., 2014; Yamagishi et al., 2012) (図2)。一方でEZH1/2の機能異常がATL細胞の分子異常の起点となることから、これらの因子がATL細胞の治療標的となりうることを見出した。このアイデアをもとに、産学官連携による新規EZH1/2分子標的治療薬の開発に成功した。当研究室の成果を経て、現在臨床試験が実施されている (58th ASH, 2016)。基礎医学/生物学と臨床研究を結ぶトランスレーショナルリサーチの実例としても注目されている。



(2) HTLV-1感染が宿主細胞に与える影響

レトロウイルスであるHTLV-1は、T細胞に感染後ただちにゲノムRNAの逆転写反応を経て、宿主ゲノム内に組み込まれ(プロウイルス)、感染細胞内に安定的に受け継がれる。HTLV-1プロウイルスには新しいウイルス複製に必要な情報が全てコードされているが、宿主細胞の転写・翻訳機構を利用しなければウイルス遺伝子産物は産生されない。私たちはHTLV-1感染の影響を調べる中で、特に宿主細胞の転写・翻訳機構を巧みに利用し、ウイルス複製を可能にしている、ウイルスの転写因子TaxやRNA結合タンパク質Rexに注目し、研究を進めている。これまでの研究から、RexはウイルスmRNAを選択的に核外へ輸送し、宿主細胞のmRNA品質管理機構(nonsense-mediated mRNA decay=NMD)を抑制することにより、不安定なウイルスmRNAを保護し、効率よく翻訳系に運び込んでいることが分かった(Nakano et al., 2013)。またTaxはウイルスのプロモーターを活性化してウイルス遺伝子発現を活性化するだけででなく、EZH2やNF-Bなどの細胞内転写因子と相互作用し、その機能を制御していることを明らかにした(Fujikawa et al., 2016)。このようにTaxやRexが、宿主細胞内の遺伝子発現経路やmRNAの翻訳・代謝経路をハイジャックすることにより、ウイルス複製に有利な細胞内環境を整備している様子が明らかになってきた(Nakano and Watanabe, 2016)(図3)。今後はTaxやRexが宿主細胞経路をハイジャックすることにより、細胞内の遺伝子発現や経路にどのような影響を与えるのかを明らかにし、それらの異常が感染T細胞の不死化やがん化とどのように関係しているのか、そのメカニズムの解明を目指す。



(3) HIV-1とエイズ関連疾患の研究

エイズは世界の死亡原因の第6位(2012年,WHO)である。当研究室では、HIV-1感染症の根治を妨げるHIV-1の潜伏化(Matsuda et al., 2015)と、エイズ患者に高頻度に合併する悪性リンパ腫(Yamagishi et al., 2015)にも焦点をあて、分子レベルでの解明と新規治療法の開発に取り組む。特に宿主エピジェネティック因子の注目し、疾患の根治を目指した基礎研究を進めている。

<最近の主な論文>

  1. Fujikawa D, Nakagawa S, Hori M, Kurokawa N, Soejima A, Nakano K, Yamochi T, Nakashima M, Kobayashi S, Tanaka Y, Iwanaga M, Utsunomiya A, Uchimaru K, Yamagishi M, Watanabe T. Polycomb-dependent epigenetic landscape in adult T-cell leukemia. Blood. 2016. 127:1790-802.
  2. Nakano K, Uchimaru K, Utsunomiya A, Yamaguchi K, Watanabe T. Dysregulation of c-Myb pathway by aberrant expression of proto-oncogene MYB provides the basis for malignancy in adult T-cell Leukemia/lymphoma cells. Clin Cancer Res. 2016. 22; 5915–28.
  3. Nakano K Watanabe T. HTLV-1 Rex tunes the cellular environment favorable for viral replication. Viruses. 2016. 8: 58.
  4. Matsuda Y, Kobayashi-Ishihara M, Fujikawa D, Ishida T, Watanabe T, Yamagishi M. Epigenetic heterogeneity in HIV-1 latency establishment. Sci Rep. 2015. 5:7701.
  5. Yamagishi M, Katano H, Hishima T, Shimoyama T, Ota Y, Nakano K, Ishida T, Okada S, Watanabe T. Coordinated loss of microRNA group causes defenseless signaling in malignant lymphoma.Sci. Rep. 2015. 5:17868.
  6. Kobayashi S, Nakano K, Watanabe E, Ishigaki T, Ohno N, Yuji K, Oyaizu N, Asanuma S, Yamagishi M, Yamochi T, Watanabe N, Tojo A, Watanabe T, Uchimaru K. CADM1 expression and stepwise downregulation of CD7 are closely associated with clonal expansion of HTLV-I-infected cells in adult t-cell leukemia/lymphoma. Clin Cancer Res. 2014. 20:2851-61.
  7. Nakano K, Ando T, Yamagishi M, Yokoyama K, Ishida T, Ohsugi T, Tanaka Y, Brighty DW, Watanabe T. Viral interference with host mRNA surveillance, the nonsense-mediated mRNA decay (NMD) pathway, through a new function of HTLV-1 Rex: implications for retroviral replication. Microbes Infect. 2013. 15:491-505.
  8. Yamagishi M, Nakano K, Miyake A, Yamochi T, Kagami Y, Tsutsumi A, Matsuda Y, Sato-Otsubo A, Muto S, Utsunomiya A, Yamaguchi K, Uchimaru K, Ogawa S, Watanabe T. Polycomb-mediated loss of miR-31 activates NIK-dependent NF-kB pathway in adult T-cell leukemia and other cancers. Cancer Cell. 2012 21:121-135.
■ 佐藤准教授グループ

染色体異常の分子機構とキメラ遺伝子の機能解析

がん細胞における特異的染色体転座の分子生物学的解析が進んでいるが、腫瘍発生機構が未だ明らかにされていない腫瘍も多く存在する。我々は個々の悪性リンパ腫症例ごとの細胞遺伝学的解析を基礎にして、多段階にわたる疾患に関与する病因遺伝子異常を明らかにし、関連遺伝子の機能解析により分子病態の解明に迫る。

研究室紹介

東京大学
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