ゲノムシステム医療科学分野 2020年度は学生募集をしません

准教授: 渡邊学
TEL: 03-5449-5343
E-mail:wata{at}k.u-tokyo.ac.jp

研究紹介

【キーワード】イヌ、ネコ、比較ゲノム解析、ゲノム診断、伴侶動物臨床治験、循環型トランスレーショナルリサーチ

“イヌのために、ネコのために、いのちのために”

イヌ・ネコの疾患解析プラットフォームの確立

イヌは少なくとも1万5000年以上前に、ネコは約1万年前にヒトに飼いならされた動物であり、現在でもヒトの生活にもっとも身近な伴侶動物としてかけがえのないパートナーです。ヒトの生活に密着したペットの振る舞いはとても興味深く、またペットの病気はこころを痛める問題であることより、私たちはイヌ・ネコのゲノム・遺伝子研究を通してこれらの問題の解明・克服を目指しています。 これまでに、動物学、獣医学、ゲノム学、情報学等の人的学問的融合によりイヌ・ネコの健常や疾患症例のゲノム・血液・疾患リソース収集ネットワークを作成し、次世代型シークエンサーを用いたゲノム解読からコンピューターによる一連のゲノム解析までを独自に構築し、これら一連の解析プラットフォームを確立した国内唯一の研究室として、イヌ・ネコの形質・遺伝病・がんの解明に精力的に取り組んでいます。

イヌ・ネコゲノム解析と形質、遺伝病、がん

これまでにイヌ56種類数千サンプルおよびネコ20種類数百サンプルの健常品種および疾患リソースを保存管理しています。これらの生体リソース基盤を用いて、様々な犬種の共通ゲノム多型の比較解析による犬種ごとの特徴的な性格や体格等とゲノム多型の相関解析、遺伝病としてパピヨン犬の神経軸索ジストロフィー、秋田犬のフォークト小柳原田病、カタプレキシー併発性ナルコレプシーや、ネコのニューロパチー等の原因ゲノム多型の探索を行っています。また、がんのゲノム研究では臨床の現場への直結を目指して実際のがん生検症例を対象にした解析を進めており、イヌでは乳がん、肝がん、肺がんなどをはじめとした様々ながん種を、ネコでは好発がんである乳がんや扁平上皮癌等のがんのゲノム解析を行っています(図1)。




図1 研究の概要

イヌ・ネコのゲノム研究の応用と社会貢献

近年、これまでのマウスなどを用いた人工発症型の疾患動物モデルに加えて、イヌ・ネコはヒトと同じ生活環境で生育し様々な病気を自然発症する次世代型疾患モデル動物として注目されています。このような比較疾患ゲノム研究の観点より、私たちで探索した疾患の原因ゲノム変化に関してヒトをはじめとした他の動物種と比較を行うことで、類似疾患の発症の普遍性や疾患責任候補遺伝子の外挿などにより原因不明の疾患の解明に寄与することで種を超えた分子病態の解明に貢献しています。
また、ゲノム解析技術の臨床応用として、マルチプレックスPCR法と次世代型シークエンサーを組み合わせた方法により、疾患由来の10ng程度のゲノムを元に標的ゲノム領域を数千ペアのプライマーセットにて1チューブ内で増幅後、約24時間でゲノム解析を行う微量がん検体を用いた迅速ゲノム解析系を構築し、実際の臨床ゲノム診断検査への応用を推進しています。
一方、医学領域で開発され顕著な抗がん効果を示す分子標的薬をイヌやネコの治療に応用するために、東京大学農学部付属動物医療センターに協力を仰ぎ、現在、イヌ・ネコの乳がん症例への分子標的薬ラパチニブの臨床治験を実施しています。 また、盲導犬のゲノム解析により盲導犬育成の成功率の上昇、なりやすい病気の原因を調べ予防することで、盲導犬としての資質をもちかつ病気になりにくい安心で健康な盲導犬の育成に協力することで社会貢献を行っています。
このような研究活動を通して、様々なバックグランドをもつイヌ・ネコに関わるすべての人に必要とされる情報や要望を共有し、相互に協力と成果と情報とがすべてに行き渡る、“循環型トランスレーショナルリサーチ(情報・問題共有型の橋渡し研究)”体制の構築を推進しています。(図2)




図2 循環型トランスレーショナルリサーチの概念図

ひとりの獣医病理医として、数多くのイヌやネコの症例や御献体に携わらせていただいた経験がこれらの研究活動の原点です。これまで助からなかったいのちがひとつでも助かることを目指して、また私たちの研究活動により世の中が豊かになるような社会貢献ができることを目指して“イヌのために、ネコのために、いのちのために”研究を進めています。

参考文献

渡邊学. イヌゲノム研究の現状と課題と展望 -イヌと起源、形質、遺伝病、がん-,動物遺伝育種研究44(2):25-41. (2016)

研究室紹介

東京大学
東京大学大学院新領域創成科学研究科
最新発表論文
教養学部生へ

このページの先頭へ戻る