分子機能情報学分野

客員准教授: 齋藤 裕
E-mail: yutaka.saito{at}aist.go.jp
研究室HP

研究紹介

【キーワード】機械学習、バイオインフォマティクス、 タンパク質工学、エピゲノム 、 RNA、ロボティックバイオロジー

◆情報技術で生命科学研究をスマートに

計測技術が飛躍的な進歩を遂げた現在においてもなお、生命科学研究は膨大なトライアンドエラーや実験の再現性といった問題から脱却しきれていません。当研究室では、機械学習やバイオインフォマティクスなどの情報的 アプローチ に基づき、これらの問題を解決するための技術を開発しています。また、生命科学研究の未来の姿としての「実験ロボットによるラボ自動化」の実現に向けて、実験ロボットの可用性を向上するための情報技術の開発にも取り組んでいます。

◆機械学習に基づく生体分子設計と機能改変:タンパク質、mRNA、プロモーター

これまで抗体や酵素などの機能性タンパク質の開発は、低機能な野生型タンパク質にランダムな変異を導入して機能を改善していくというトライアンドエラーによって行われてきました。我々はタンパク質の機能改変を効率化するために、機械学習手法の一種であるベイズ最適化を用いてタンパク質の機能向上変異を予測する手法を開発しました。また、実験系ラボとの共同研究により、緑色蛍光タンパク質(GFP)を黄色蛍光タンパク質 (YFP)へ改変する問題に本手法を適用して、既知YFPより長波長で蛍光強度も高い新規YFPを多数発見することに成功しました(右図)。最近では、微生物による物質生産の効率向上を目的として、翻訳効率の高いmRNAコドン配列の設計や、転写活性の高いプロモーター配列を設計するための情報技術の開発も行っています。
機械学習と実験を組み合わせたタンパク質機能改変サイクル

◆オーミクス 情報解析技術:DNAメチル化からゲノム3次元構造まで

高速シーケンサーによって得られる様々なオーミクスデータから有用な知識を発見するためのアルゴリズムを開発しています。これまでに開発した手法として、配列データから特定の機能性RNAファミリーを探索する手法 BPLA Kernel、DNAメチル化データ(bisulfite seq)をサンプル間で比較してメチル化変化を検出する手法ComMet、ゲノム3次元構造データ(HiC-seq)から遺伝子の空間的な共局在を発見する手法Coseargeなどがあります。また、開発した手法の有効性を実験系ラボとの共同研究において実証することも行っています。例えば、BPLA Kernelは線虫のsnoRNAファミリーの探索に使用され、ComMetは脂肪細胞分化におけるエピゲノム変化の解析に使用されました。最近では、バイオ産業の物質生産に利用される細菌やカビ類のメチル化解析も行っています。


隠れマルコフモデルによるメチル化変化検出手法 ComMet

◆ロボティックバイオロジー:実験ロボットによるラボ自動化に向けて

生命科学の実験技術は、実験を行う人間の「上手い下手」によって結果が安定しないことや、「ラボ秘伝のコツ」の存在によりラボからラボへの技術移転に困難を生じることがしばしばあります。電子データとして記述された実験プロトコルに基づき、同じ動作を正確に繰り返し行う実験ロボットは、これらの問題を解決できる可能性を秘めています。しかし、現在の実験ロボットは行える動作の種類が限られるなど、実用化に向けた課題は多いです。我々は産総研臨海センターに設置された実験ロボット「まほろ」を主な対象として、実験ロボットの可用性を向上させるための情報技術の開発を行っています。例えば、人間 が行う実験手順をロボットの限られた動作で行える範囲の等価な実験手順へと変換する「プロトコル翻訳技術」の開発に取り組みます。

研究方針・環境

研究テーマは 、希望に応じて3つのタイプから選択できます。
(1)新しい情報解析手法を開発する理論的な研究、(2)既存の解析ツール等を公共データに適用して新しい発見を目指す研究 、(3)共同研究先のデータを解析して実験系ラボと協力しながら進める研究。
研究室の所在地は、産業技術総合研究所 臨海副都心センター(お台場)です。

研究室紹介

東京大学
東京大学大学院新領域創成科学研究科
最新発表論文
教養学部生へ

このページの先頭へ戻る