ゲノム情報解析分野

教授: 浅井 潔>
E-mail: asai{at}edu.k.u-tokyo.ac.jp
研究室HP

研究紹介

【キーワード】確率モデル、ゲノム情報、RNA情報、RNA2次構造、配列設計、秘匿計算

当研究室では、情報学の立場から生命を理解するための研究をおこなっています。その基盤として、確率的な枠組みを中心とした数理的な理論を重視しており、新しいアルゴリズム・ソフトウェアの開発とその応用に取り組んでいます。

■ ゲノム情報解析

ゲノム塩基配列は、単なる文字列ではなく、その背後には物質としての構造があり、複雑な生命現象のメカニズムが隠れています。「見る」ことができる文字列の背後に、「意味」が隠されているのです。ゲノム配列は、我々が手にすることができる生命情報の中で最も精度の高いデータですから、ゲノム配列に隠された「意味」を見出す研究は極めて重要なのです。浅井研では、新型の高速シークエンサーの巨大配列データから、確率的な基盤に基づいた信頼できる情報を効率的に抽出するための手法を研究しています。

■ RNAインフォマティクス

RNA干渉やマイクロRNAによる翻訳抑制の発見以降、ゲノムから転写されるがタンパク質には翻訳されず、RNAとして機能を発揮する非コードRNAが、様々な細胞内の現象に重要な役割を担っていることが明らかとなりました。細胞内のRNAの機能は、RNAが形成する2次構造と密接な関わりがあるため、塩基配列からRNA2次構造を高精度に予測することが重要です。我々は、信頼性の高いRNA2次構造予測ソフトウェアCentroidFoldをはじめ、RNA配列・構造の情報解析で世界をリードする理論・ソフトウェアを数多く生み出してしてきました(http://www.ncrna.org)。RNAの構造は室温でも熱揺らぎにより変化しており、最も安定な2次構造ですら存在確率は極めて小さいので、RNA2次構造の確率分布を様々な角度から解析する手法を研究しています。

近年、ゲノムDNAの修飾が細胞分化などに重要な役割を果たすことが明らかになりましたが、RNAでも転写後の修飾が構造や機能に大きな役割を果たしています。現状では困難な、修飾を受けたRNAの構造予測を可能とするため、分子動力学計算と実験を組合せ、修飾塩基を含むRNAの構造予測用パラメータの決定に取り組んでいます。その結果は、RNA情報解析のツール群に組み込んでRNA修飾の役割の解明に役立てたいと考えています。

RNA情報解析は近年に進歩したため、大規模なゲノム情報解析には、最新のRNA情報解析技術を駆使することによって解決しそうな研究テーマが数多く残されています。

■ ゲノム配列設計

微生物に目的物質を効率的に産させることを目的として、人工的なゲノム配列を設計する研究も行っています。AMEDプロジェクトでは、抗体を微生物に生産させるためのDNA配列設計技術の研究を行ってきました。NEDOプロジェクトではDNA配列の膨大な組み合わせを実験で生成し、機械学習などの人工知能技術と組み合わせて、有用物質の生産に最適なDNA配列を探索する技術に取り組んでいます。これらのDNA配列設計では、遺伝子群のmRNAへの転写効率とともに、mRNAの翻訳効率も目的とする物質の生産が向上するように最適化しなければなりません。配列情報解析技術、RNA情報解析技術をさらに発展させるだけでなく、翻訳効率とRNAの構造の関係など、研究課題も豊富です。

■ 秘匿化計算技術

個人ゲノムの塩基配列情報など膨大なデータからは、機械学習など最先端の人工知能技術を駆使して、価値のある情報を得ることが期待できます。そこで、個人情報や知財情報などの秘匿すべき情報を漏えいすることなく、安全に解析する技術として、データを暗号化したまま処理する秘匿化計算技術が注目されています。多様なアプリケーションを秘匿化情報処理として社会実装することを可能とする「汎用秘匿化依頼計算技術」の研究を行っています。

■ 主な研究プロジェクト

■ 研究環境

当研究室では、学生の自主性を尊重し、学生自身が興味を持つテーマを掘り下げ、研究室内外のメンバーとの議論を通じて研究を進めていく方式を取っています。数理的な理論や、プログラミング技術を習得しながら、学生自身の興味と資質に応じで研究を進めていくことができます。生物学の知識の乏しい学生でも、研究テーマが見つけられるように配慮しています。

研究室紹介

東京大学
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