
【キーワード】翻訳品質管理・RNA発現制御、リボソーム・ユビキチン化、タンパク質恒常性維持・異常タンパク質分解
正確な遺伝子発現は生命現象の根幹であり、異常タンパク質の産生はタンパク質恒常性の破綻をもたらす根本原因と考えられる。異常タンパク質は、翻訳後に様々な要因で立体構造等の変化により生じるが、異常なmRNAや不正確な翻訳反応、さらに異常なリボソームでも産生されることが明らかになってきた。我々は翻訳伸長異常を認識し、合成途中の新生ポリペプチド鎖を分解するRQC(Ribosome-associated quality control)を発見し、リボソームの特異的なユビキチン化による運命決定機構を解明してきた。さらに、機能を欠損したリボソームを分解する品質管理機構であるNRD(Non-functional rRNA Decay)についても、E3ユビキチンライゲースによるリボソームタンパク質の特定部位でのユビキチンの機能を解明している。これらの翻訳品質管理は、異常タンパク質の産生を抑制し、タンパク質恒常性を維持する分子機構の解明は、様々な異常タンパク質蓄積により引き起こされる疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病等の神経変性疾患)や老化に関する創薬の分子基盤になることが期待される。
翻訳の異常はどのように感知され、異常たんぱく質はどのように分解・排除されるか?
神経細胞でどのような異常翻訳がおこり、品質管理で認識・排除されるか?
異常リボソームはどのように認識され排除されるのか? リボソーム異常に起因する疾患はどの様に発症するか?
老化によるタンパク質恒常性異常の実体は?
関連する研究分野・研究領域は、以下の通りです。
【遺伝学・生化学】翻訳品質管理・RNA発現制御
【細胞生物学・神経科学】タンパク質恒常性の破綻による神経細胞死と疾患発症メカニズム
【構造生物学】クライオ電子顕微鏡を用いたリボソームと品質管理因子の単粒子解析
稲田研究室では、以下の2つの専攻からの受け入れしています。詳細は、各専攻のウェブサイトをご確認ください。
・東京大学 大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻
・東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻
Matsuo et al., Nature Communications 2023; Tomomatsu et al., NAR 2022; Li et al., Mol Cell 2022; Narita et al., Nature Communications 2022; Udagawa, Seki, et al., Cell Rep. 2021; Matsuo et al., Cell Rep. 2021; Mizuno et al., NAR 2021; Buschauer, Matsuo et al., Science 2020; Matsuki and Matsuo et al., Sci Rep 2020; Matsuo et al., NSMB 2020; Hashimoto et al., Sci. Rep. 2020; Sugiyama, Li et al., Cell Rep. 2019; Ikeuchi et al., EMBO J. 2019