複雑形質ゲノム解析分野

教授: 鎌谷 洋一郎
TEL: 03-5449-5286
E-mail: kamatani.yoichiro{at}edu.k.u-tokyo.ac.jp
研究室HP

研究紹介

[キーワード]ゲノム, ポリジェニック・モデル, 遺伝学・統計学, ゲノミクス・オミックス, AI・機械学習

 我々の研究室は、ゲノムやオミックスなどのヒト生体ビッグデータを遺伝統計学や学習理論に基づいて解析し、複雑形質とは何かという問いに、データ解析から迫ることを目指します。 形質とは生物の持つ性質で、個体を特徴付ける情報です。形質としては、例えば外見や性格、血液検査値、あるいは疾患などが挙げられます。数個以下の遺伝子で説明できるような形質でないものをcomplex traitと呼びます。この学術用語はわが国では多因子形質と訳されることが多いですが、あえて本分野では複雑形質と直訳することにしました。

ヒトの複雑形質には遺伝性があることが知られています。我々や様々な研究者が行ったSNPアレイを用いたゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study; GWAS)により、非常に多数の遺伝子制御領域のありふれた遺伝的バリアントが複雑形質に関連し、しかも複数の複雑形質は雲のように徐々に相互に関係し合っていることがわかってきました。これは、ゲノム配列の違いに基づき、細胞内ネットワークの一般的な応答性などの面において多様性が生じ、それに対する全身あるいは局所における細胞内外への環境因子の入力と相まって、最終的な形質が構成されていくということを意味しているのだと考えています。

複雑形質の研究は次のステージに入ってきており、レアバリアントやオミックスデータを統合解析していく必要があります。ありふれたバリアントの遺伝効果の検出には線形解析であるGWASが有効でしたが、これらの新しいデータには新しい解析手法が必要になると考えています。そのため、遺伝統計学の基礎に基づき、学習理論を取り込んだ新しい複雑形質の解析を目指すのが当研究分野の方向性です。 また、将来の日本においてゲノム・オミックス情報が医療現場や社会において用いられるようになってきたとき、複雑形質ゲノムという観点から理論的あるいは実践的にそれらに関わることのできる人材の育成を目指します。

参考
Science (1994) Vol. 265, 2037-48
Nat Genet (2010) Vol. 42, 210-5
Nat Genet (2017) Vol. 49, 1458-67
Nat Genet (2018) Vol. 50, 390-400
Science (2018) Vol. 360, eaap8757
Nat Genet (2019) Vol. 51, 379-86

 

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