
【キーワード】ゲノム、がん、p53、大規模コホート、SNP
我々の研究室の目標は、ゲノム解析を通じて病気の原因を明らかとし、さらには病気を制圧する事です。その為に、当研究室では様々なアプローチで研究を行なっています。
遺伝子の異常が蓄積することが癌化の原因ですが、中でもp53は約半数の癌で異常がみられる最も重要な癌抑制遺伝子です。我々は多くの新規p53下流遺伝子を単離し、これまで知られていなかったp53の機能を次々と明らかにしてきました。現在次世代シークエンサーやプロテオーム・メタボローム解析などの網羅的探索によって、新たなp53を介した発癌制御メカニズムの解明を進めています。さらにこの様な解析によってがん細胞が普遍的に持つ特徴を明らかとし、新たな治療戦略の探索も進めています。
また疾患発症に関わる宿主因子の解析も進めています。我々の研究室は約23万人のサンプルからなるバイオバンクジャパンの管理運営を行っており、約60の医療機関や臨床研究グループ、国立病院機構などと協力して血液や組織などのサンプル、付随する臨床情報の収集を進めています。さらに血液から精製したDNAを用いて病気になった方と健康な方の一塩基多型(SNP)というDNA配列の違いを比較します。ヒトの全遺伝子領域を網羅する数十万箇所のSNPについて数千人から数万人規模で解析する事により、病気のなりやすさに関わる遺伝的素因を明らかとします。この研究によって、病気の発症メカニズムの解明や疾患発症リスク予測・予防、早期発見に利用できます。
癌組織のDNA配列を網羅的に調べる事によって、発がんにおいて生じる遺伝子異常の探索も行っています。骨軟部腫瘍は症例が少ないためこれまで解析があまり進んでいませんでしたが、現在国内の約20の医療機関と連携し共同研究体制を組むことで、希少がんである骨軟部腫瘍に対して大規模なゲノム研究が実現可能な体制が構築されました。現在脂肪肉腫など複数の希少がんのゲノム解析を進めています。
我々の研究室では、主にがんを対象とした基礎的研究を、DNA・RNA・タンパク質から培養細胞・マウス・臨床検体まで様々な研究材料を用いて、幅広い解析手法を駆使して行っているのが特徴です。興味のある方は、メールなどでお問い合せください。また研究の詳細な情報については、ホームページを参照して下さい。(http://square.umin.ac.jp/matsudalab/)