分子医科学分野
准教授: 富田 野乃
TEL: 04-7136-3644
E-mail: nono{at}edu.k.u-tokyo.ac.jp
研究室HP
研究紹介
【キーワード】翻訳系、リボソーム、tRNA、酵母、ミトコンドリア
*上田卓也教授は平成31年4月より早稲田大学に異動されました。当分野の研究内容については、研究室HPも御覧ください。
蛋白質合成系は生命の根幹となるメカニズムである。真性細菌、真核生物、オルガネラの蛋白質合成系の共通原理の解明を進めている。また、試験管内で再構築した蛋白質合成系を用いて人工細胞の構築という合成生物学的目標に挑戦している。さらに、無細胞蛋白質合成系を用いた蛋白質創薬の開発を推進している
(1) 蛋白質合成系の生化学
大腸菌の蛋白質合成システムを精製された因子から再構築することに成功している(PURE system)。このシステムを用いて大腸菌の蛋白質合成系の生化学的解析を進めている。また、酵母、ミトコンドリアのPURE systemの構築を進めている。酵母のPURE systemを用いて、不明の部分が多い真核生物の翻訳調節機構、とくにmRNA品質管理機構のメカニズム解析に取り組んでいる。ミトコンドリアの翻訳系のメカニズムの解析では、ミトコンドリア病などの疾患と関連づけながら進めている。
PUREシステム
(2)PURE systemを用いた人工細胞の構築
大腸菌のPURE systemを用いて大腸菌のゲノム上の約4,000の蛋白質の合成を行った。また、より高次の構造体であるリボソームなどの超分子複合体や、ATP合成酵素などの膜蛋白質複合体が合成可能なセルフリー系の開発に取り組んでいる。これらのバイオシステムをBottom-up的に組み上げることで、バイオシステムの集積体である人工細胞の合成に挑戦している。
PUREシステムを組み込んだ人工細胞
(3)試験管内進化系による医薬プローブの開発
抗体医薬品はこれからの創薬の中心となることが期待されているが、抗体の開発には膨大な開発費が必要である。PURE systemに基づいたリボソームディスプレー法は、こうした抗体医薬品の開発を加速する技術である。PURE systemで合成したヒトGPCRを用いて、リボソームディスプレー法より蛋白性医薬品の開発を進めている。
創薬を指向したリボソームディスプレー法
参考論文
Nat Biotechnol (2001) 19, 751-755
Mol Cell (2009) 35, 502-510
Angew Chem Int Ed Engl (2014) 53, 7535-7538
Biochem J (2012) 442, 631-638
PNAS (2009) 106, 4201-4206
PNAS (2012) 109, 8937-8942
Nat Protoc (2015) 9, 1328-1344
BBRC (2007) 352, 270-276
BBRC (2012) 428, 395-400