研究室紹介

メディカルサイエンス群/兼担川口研究室
(医科研 ウイルス病態制御分野)

様々な感染症を引き起こすウイルスは、DNAまたはRNAのいずれかを遺伝子として持ち、そのまわりをタンパク質の外殻が囲んでいる極めて小さく、かつ、単純な構造をもつ粒子です。この小さく・単純なウイルスがヒトや動物に感染すると複雑な病気を引き起こします。そして、これらの病気の制圧は困難な場合が多いのが現状です。私達の研究室では、DNAを遺伝子として持つ代表的なウイルスであり、医学上重要なヘルペスウイルスをモデルとし、「ウイルスがどの様に増殖するか?」「どの様に宿主に病気を引き起こすか?」といったウイルス学の根幹をなす命題に迫るべく、戦略的基礎研究を推進しています。また、基礎研究で得られた知見を基に、ウイルス感染症の制圧に直結する新しいワクチンの開発や抗ウイルス剤の開発に繋げる橋渡し研究も行っています。  ヘルペスウイルスは宿主に潜伏感染と回帰発症(再発)を終生繰り返します。宿主の一生において、ヘルペスウイルスが病気を引き起こす期間は実は極めて短く、大部分の期間は病気を引き起こさない潜伏感染として宿主と共存します。興味深いことに、ヘルペスウイルスの潜伏感染が、宿主の細菌感染や癌に対する抵抗性などを制御していることが近年明らかになってきました。つまり、ウイルスは宿主に病気を起こすという負の因子であるだけでなく、宿主の生命活動に寄与する正の因子であるという新しい概念が生まれつつあります。私達の研究室では、ウイルスによる病原性発現機構の解析とその医療への応用という伝統的なウイルス学を探求すると共に、ウイルスを生体恒常性因子として捉え直し、その意義を解析するという次世代ウイルス学にも挑戦しています。

研究キーワード
ウイルス、病原性、生体恒常性制御因子
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