医療イノベーションコース/基幹講座加納研究室
(バイオイノベーション政策分野)
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加納 信吾 教授
当研究室のミッションは、ライフサイエンス・医療におけるイノベーションに関する社会科学的な研究を実施し発信していくことにあり、学生の研究テーマは全てこの範疇に入るものを対象としている。
ライフサイエンス分野の知的財産を産業振興に生かす取組みについては、基礎研究と応用展開とで異なるプレーヤーをつなぐナショナル・イノベーション・システムの価値連鎖をどのように設計するかというシステム設計の問題として捉えられ、経験論的なケーススタディを超えて、研究成果を産業に結びつけるための有効な知財戦略、技術移転システム、トランスレーショナル・リサーチ、レギュレーションのデザイン、企業戦略、科学技術政策に関する新たなフレームワークの構築が求められている。こうした問題意識に基づいて当研究室では、そもそも産業のなかでどのようなイノベーションが起きているか、イノベーションそのものをどのように測定するかという一義的な問題に立ち戻り取り組んでいる。更にはイノベーション活動を担った組織や制度との関係、イノベーターとレギュレーターの相互作用、イノベーターとユーザーの相互作用を明らかにしていくことがこれからのイノベーション政策立案や企業戦略立案に重要であると考えている。 具体的には以下の3つの領域で研究を行っている。テーマ設定は学生の自主性に基づいており、学生が持つ「漠然とした問題意識」を研究として成立させるための「Research Question」に再構築する作業は時間をかけて慎重に行い、併せて設定されたテーマに即した新たな検証方法の開発にも取り組んでいる。テーマの詳細な具体例は、研究室のホームページを参照されたい。
- 研究キーワード
- イノベーション政策、知的財産、技術標準、レギュレーション、
ライフサイエンス分野の知識マネジメントに関する研究
ライフサイエンス分野における知財戦略・企業戦略や科学技術政策を議論するための基礎となる知識マネジメントに関する研究に取り組んでいる。特に医薬品分野においては、製品と特許の関係(Product-Patent Linkage)が他分野よりも明確であり、特許戦略と薬事戦略の組合せによる医薬品のライフサイクルマネジメント(LCM)については実証分析を重ねてきたが、遺伝子組換え種子などの他分野・他産業における知識サイクルとの比較により、企業の知識マネジメントと科学技術政策や規制政策との相互作用をモデル化して分析するなど分析結果の一般化にも努めている。
ここでの問題意識は、研究成果の利用のための「知識マネジメントサイクル」の全体像を明らかにすることにある。研究成果がうまく活用されていない、あるいは独占的に利用されているという問題は、特許による知識の権利化という制度のみの問題ではなく、知識(研究成果)を利用するための社会システム全体のデザイン問題であると捉えて研究を行っている。
先端医療におけるイノベーションの測定
先端医療分野におけるイノベーションの実態を把握すること目的とした研究領域である。特許戦略、産学連携、企業戦略の実証分析の手段として、特許DB・文献DBを用いたパテントメトリクス、ビブリオメトリクスの他、特定の技術・製品・企業に焦点をあてて、研究開発活動の測定方法の開発を通じて、イノベーション創出活動を実証的に分析していくことを目指している。社会科学においてもデータの取得と解析においてはデータサイエンスで用いられる各種手法の導入が進んできており、当研究室においても研究の効率化と分析対象の拡大のためにデータサイエンティストとの共同研究や情報交換を行っている。先端医療で発生するビッグデータは、論文、特許、各種データベース等の研究データのみならず、ルール(規制やガイドライン)、医療製品を審査・承認するプロセスで発生する文書、リアルワールドデータまでが含まれる。データアクセスは改善されてきているものの、分析フレームワークや解析モデルの開発が遅れており(つまりどう解析することが必要なインテリジェンスをもたらすのかについての試行錯誤が不足している)、オーソドックスな測定とユニークな測定の組合せにより、データオリエンテッドなイノベーションの測定に取り組んでいる。
ナショナル・イノベーション・システムに関する研究
ナショナル・イノベーション・システムとしての我が国の制度・組織、産学連携、レギュレーション、技術標準、科学技術政策に関する研究を行っている。 新しく発生してきた科学技術に対して、技術標準や薬事規制は適時に整備されていく必要があるが、そのタイミングの遅れは実用化への阻害要因となり、産業競争力にも直結している。当研究室では、この問題を「イノベーション政策としてのレギュレーション・システム」と捉え、定義が混乱しているレギュラトリーサイエンスを「レギュレーションのトータルな政策プロセス」として再定義し、イノベーションとレギュレーションの相互作用を解析している。具体的には、技術予測活動と薬事ガイドライン・技術標準の整備の関係、技術標準・ガイドラインの組成プロセス、技術標準と薬事規制の関係性、医療におけるレギュラトリーパスの選択問題、日米欧3極で規制が異なっている再生医療、診断薬、医療機器における規制の国際比較、ルール組成を担う媒介組織等の研究に取り組んでいるが、「レギュレーションのイノベーション」は我が国にとって急務である。
産学連携については、大学からの特許出願、技術移転を解析するためのモデルの構築とその適用、大学からの技術移転等を扱っているが、2004年の大学特許システムの変更前後の変化とその後の推移を観測し、産学連携システムの更なる改革に向け提案を行っている。
修士課程から「医療イノベーションコース」を選択する場合、博士課程で理系の研究者に戻ることは難しいため、キャリアパス設計上の意義付けを明確にしておく必要がある。
社会人の博士課程入学にも門戸を開いているが、月例の研究ミーティングへの出席は義務であり、継続的にコミットできることが条件である。
いずれの場合も、当コースの大学院の受験を検討される際には、指導を希望する教員にアポイントを取り面談を行い、これまでの研究内容、課程での研究計画、卒業後の予定について自らの考え方を説明し、十分に指導教員と話し合いを行った上で受験することを強く推奨する。
注意事項
修士課程から「医療イノベーションコース」を選択する場合、博士課程で理系の研究者に戻ることは難しいため、キャリアパス設計上の意義付けを明確にしておく必要がある。
社会人の博士課程入学にも門戸を開いているが、月例の研究ミーティングへの出席は義務であり、継続的にコミットできることが条件である。
いずれの場合も、当コースの大学院の受験を検討される際には、指導を希望する教員にアポイントを取り面談を行い、これまでの研究内容、課程での研究計画、卒業後の予定について自らの考え方を説明し、十分に指導教員と話し合いを行った上で受験することを強く推奨する。