研究室紹介

メディカルサイエンス群/兼担泊研究室
(定量研 RNA機能研究分野)

研究キーワード
RNA、サイレンシング、生化学、生物物理学

私たちのゲノムDNAにコードされた遺伝情報の多くは、転写によってmRNA(messenger RNA)へと写し取られたのちに、タンパク質へと翻訳されることで発現します。1958年にクリックによって提唱されたこのセントラルドグマの概念は、生命の根幹を成す基本原理として広く受け入れられてきました。しかし現在では、この概念には数多くの例外が存在していることがわかっています。私たちの研究室ではそのような例外の代表格である、非コードRNA(non-coding RNA; ncRNA)と呼ばれる「タンパク質に翻訳されずにはたらくRNA」に注目し、その機能と動作原理の解明を目指して研究を行っています。
非コードRNAの代表例としては、分子生物学の黎明期に発見されたrRNA(ribosomal RNA)、tRNA(transfer RNA)、snRNA(small nuclear RNA)などがよく知られています。これらのRNAは、mRNAの成熟やタンパク質への翻訳といったセントラルドグマの基本過程に必須であることから、長年にわたって詳細な解析が進められてきました。一方最近の研究からは、細胞の中にはこれらの古典的なRNAだけではなく、もっと多種多様な非コードRNAが存在していることが明らかとなっています。1990年代以降になって次々と発見されたmiRNA(microRNA)やsiRNA(small interfering RNA)、piRNA(PIWI-interacting RNA)などの20~30塩基の小分子RNA(small RNA)は、自身と相補的なRNAを選択的に認識し、その分解や翻訳抑制を引き起こすことで、遺伝子の発現を負に制御しています。また近年、long non-coding RNA(lncRNA)と呼ばれる長い非コードRNAが、核内でクロマチン動態や転写のエピジェネティックな制御に関わるなど、多様な役割を果たしていることが明らかになって来ています。これらの非コードRNAは、遺伝子発現を緻密に制御することで、複雑で高次な生命現象を支えていると考えられています。しかしこれらの非コードRNAが、どのようにして生み出され、どのような原理で機能しているのかについては、まだほとんどわかっていません。私たちの研究室では、生化学、生物物理学、細胞生物学、遺伝学などを組み合わせることにより、非コードRNAを中心としたRNAワールドの不思議に挑戦しています。
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/tomari

  • 小さなRNAの一種であるsiRNA(くし)は、RISCと呼ばれるエフェクター複合体(お盆)を形成することにより、自身と相補的な配列を持つ標的mRNA(組みひも)を切断(はさみ)し、その発現を抑制します。

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